ルーマニア・ハンガリーの旅

日程作成のポイント

ハンガリー刺繍には大きく分けて三つのスタイルがあり、2年前に一番ポピュラーでシンプルな花柄スタイルのカロチャ刺繍を見にカロチャに行ってきました。今回はメゼーケベジュドに濃厚な花柄スタイルのマチョ刺繍を、そし現在はルーマニア領ですが以前はハンガリー領で今でもハンガリー族が住むクルージ・ナポカの郊外の村に最も古いスタイルのイーラーシュシュ刺繍を見に行くことを最大の目的とし、観光的には世界遺産とルーマニアとハンガリーのクリスマスマーケットを見に行くコースとしました。

航空券の手配

ルーマニアなどの東欧諸国は日本からの直行便はなくトルコ航空が所要時間も短く乗り継ぎが良く便利です。9月にトルコ航空から50330円(燃油サーチャージ及び海外諸税こみ)という驚異的な特別料金が発表になり早速JTB格安サイトで予約しました。

ホテルの手配


クリスマスマーケットが開かれる広場の前のホテルで便利


旧市街の中のホテル

クリスマスマーケットが開かれる広場の近くのホテルで便利


クリスマスマーケットが開かれる広場から15分ほどのホテルで設備も良い


クリスマスマーケットが開かれる市内中心のアパート(民泊)設備は良く料金は格安、チェックインは指定時間に係員と待ち合わせて行うので、早く着いてもまつしかない。支払いはチェックイン時に現金払い、チェックアウトは鍵をメールボックスに入れる。


街はずれの温泉ホテルで設備は良い

専用車の手配

冬の旅でスーツケースを持っての列車移動は大変です。また自由な日程作成と刺繍の視察を行うため専用車を手配しました。

まずネットで探したブカレストの旅行会社(EXACT Tours)にクルージュ・ナポカ区間(カロタセグ地方及びシック村の刺繍視察)の手配を依頼しました。(①12月24日英語ガイド:100ユーロ、②シック村訪問家庭訪問:50ユーロ、③シック村夕食代:お一人様10ユーロ(合計20ユーロ)、④12月24日専用車(運転手付き):130ユーロ(運転手の食事代込み)、合計300ユーロ)、大変丁寧な日本語の交信でした。また刺繍視察部分の手配は完璧で期待以上でした。

ブカレスト空港からクルージュ・ナポカまでの区間はEXACT Toursの見積もりはスルードライバーのため高額でしたので、各地のローカル会社を探して手配しました。

①ブカレスト空港〜ブラショフ〜ブラン城〜シギショアラ(2日間)
ブラショフ・・4T4U 65+95=160ユーロ 英語の交信でしたが回答が早く料金も格安で車(ベンツ)もドライバーも優秀で最高でした
②シギショアラ〜ビエルタン〜シビウ
シギショアラ・・Your Guide in Tansylvania シギショアラ半日観光+シビウまでのトランスファー=170ユーロ ガイドが本職でトランスファーは追加サービス
③シビウ〜クルージュ・ナポカ
シビウ・・AirportsTaxiTransfer.com 空港トランスファーの会社に依頼しました 127ユーロ

④ブダペスト〜ホッロークー〜メセーケヴェジュド 390ユーロ 世界遺産のホッロークー観光とメセーケヴェジュドの博物館など刺繍視察を含みます
⑤メセーケヴェジュド〜ブダペスト空港 Kiwitaxi 114ユーロ 世界100カ国2000都市で展開している空港トランスファー予約会社 サービスはしっかりしている

バスの手配

クルージュ・ナポカ〜ブダペスト・・Kameleon 100レイ(概算2700円)ミニバス
かなり狭く長時間の乗車で快適ではありませんが他にブダベストに直行する交通手段がありませんので我慢するしかありませんでした。

ブラショフ Brasov

日本を夜発ってルーマニアの首都ブカレストに朝着き、タクシーで標高800mのスキーリゾートのシナイアの町を経由し2時間半ほどでブラショフに着きました。旧市街の中心の広場でクリスマスマーケットが開かれていました。ドイツのものに比べると規模は小さく人出も少ないですが夜になるとライトアップされ大変綺麗でした。

ブラショフ民族博物館 Ethnographical Museum Brasov

ルーマニア各地の民族衣装が展示されていました。20世紀初頭のジャガード式自動織機があり実演してくれました。古い手機から現在の自動織機に移る前の半自動の機械で大変興味深いものでした。

ルシュノフ要塞 Rasnov Fortress

ブラショフからブラン城に行く途中の山の上に造られた要塞です。駐車場からトラクターに引かれた車に乗って登ります。頂上からは360度の絶景が望めます。オフシーズの早朝ということもあり我々二人しか来訪者はおらず貸し切りの贅沢な時間を過ごすこととができました。

ブラン城(ドラキュラ城)Bran Castle

ルーマニアの観光地では一番有名なところでしょう。流石に観光客も多くトイレや売店といった設備や城内の展示も整っていて観光しやすくなっていました。

ビスクリ要塞教会 Viscri Fortified Church

トランシルバニア地方に100以上ある城壁で囲われた教会の一つで世界遺産に指定されています。残念ながら冬期のため閉まっており中に入れませんでしたが豪壮な造りで圧倒的な存在感がありました。

シギショアラ Sighisoara

ブラショフから120km、中世の町並みが残る城塞都市です。多くの人々は山の下の新市街に住んでいて山上の城郭内旧市街に住む人は少なくレストランや店舗もあまりありません。夜は歩く人も少ない暗い町並みが幻想的でした。

ビエルタン要塞教会  Biertan Fortified Church

シギショアラから27kmのビエルタンにある要塞教会。三重の壁に囲まれた堅固な造りで教会というより城と言う方がピッタリする。ここも残念ながら冬期のため閉まっており中に入れませんでした。

 

シビウ Sibiu

トランシルバニア高原の南端に位置する古都。旧市街の中心の大広場ではルーマニア最大と言われるクリスマスマーケットが開かれていました。ドイツのニュールンベルクやシュトットガルトに比べ屋台の数や人出も遥かに少ないものですが、広場を取り巻く建物にプロジェクションマッピングされ大変美しいものでした。

クルージュ・ナポカ Cluj-Napoca

トランシルバニア地方の中心都市。ルーマニアで二番目に大きい聖ミハイ教会のたつ統一広場でクリスマスマーケットが開かれていました。食事の屋台ではルーマニア料理の中をくり抜いたパンに入った豆のスープが売られていました。ミニアイススケート場や音楽のステージが開かれ、サンタクロースが広場の周りのレストランや会場を歩きチョコレートを配っていました。ホテルの窓から正教聖堂と国立劇場が見え夜はライトアップされて綺麗でした。25日のクリスマスはキリスト教国の常でレストランを含めほとんどどこも開いていません。開いているのは教会と夜のクリスマスマーケットぐらいでした。日中はホテルでのんびりし、夜になって夕食を兼ねてクリスマスマーケットに行き、かろうじて開いているレストランを見つけ夕食にありつけました。外は雪になり静かなホワイトクリスマスでした。

トランシルバニア民族博物館  Ethnographic Museum of Transylvania

トランシルバニア地方の民族衣装が展示されています。残念ながら展示変更作業が行われていて一部見ることができませんでした。

カロタセグ地方 Kalotaszeg Area

クルージュ・ナポカの西50kmほどの地域の村イズヴォル・クリシュルイの国道沿いに民芸品を売る店が並んでいます。クリスマスイブのため開いている店は少なかったのですが良い刺繍を買うことができました。丘の上には町を見下ろすように要塞教会が建っていました。

シック村 Sic Villege

クルージュ・ナポカの北東40kmほどのハンガリー系住民が住む村。まず教会に行くと丁度ミサがあるようで村人が三々五々集まっていました。年配の女性は民族衣装(赤又は黒のスカート、黒い防寒上着、黒いスカーフ)を身に着けていました。教会の中では小学生くらいの子供がバイオリンで賛美歌を弾いていました。次にブカレストの旅行会社に依頼してあったシック村家庭訪問です。シック村の伝統的な緑色の家に着くと白いスカーフをかぶり赤い服を着た女性が出迎えてくれました。67歳になるクララさんでした。そしてなんと我々を連れてきてくれた車の運転手はクララさんの息子さんでした。丁度クリスマスイブなので実家に帰ってきたのでした。ガイドのロクサーナさんがギターを持ってきていて、クララさんの家の前で歌を歌い始めました。歌を歌わないと家に入れてくれない風習があるんだそうです。家に入ると歓迎のお菓子が用意され、自家製のスモモのパリンカ(強い蒸留酒)で乾杯です。ダイニングルームのサードボードや壁の飾り棚などは綺麗な花がらの塗装がされていましたが全てクララさんの手によるものだそうです。一旦外に出て「清潔の部屋」と呼ばれる嫁入り道具を飾る部屋のある離れに案内されました。そこでもう一つのサプライズが待っていました。玄関を入ると日本の本が置いてありました。「ルーマニアの赤い薔薇」という1991年に出版された日本ヴォーグ社発行の写真集です。この写真集を見てシック村に来ることを決めた本でした。伺ってみると著者の「みやこうせい氏」はクララさんの家に泊まって取材していたそうです。また日本のテレビ番組の取材で女優の羽田美智子さんが10日間泊まって生活したことも分かりました。「清潔の部屋」に入ると天井まで届く枕カバーをはじめカラフルな寝具や衣装箱で埋め尽くされていました。これこそ本やインターネットで見て憧れたそのものと感激しました。母屋に戻ってクララさんから刺繍の手ほどきを受け、日本では見たことのない技法を習うことができました。そのあとクリスマス料理をいただきました。チキンスープ、牛肉料理、デザート、どれもクララさんの手料理です。素朴で暖かく美味しい料理を堪能していると、小学生くらいの男の子が入ってきて賛美歌を歌いはじめました。歌い終わるとみなさんからお年玉が渡されます。これがこの地方のクリスマスの習慣のようでした。期待以上の体験ができた素晴らしいクリスマスイブとなりました。

ブダペスト Budapest

クルージュ・ナポカからブダペストまで350kmをミニバスで移動しました。9人乗りのミニバスで料金は一人100RON(約2700円)と格安です。日本でインターネットで予約しクレジットカードで支払いも済んでいます。ハンガリー国境でのパスポートチェック(所用20分程度)を含めブダペストまで約6時間のドライブは席が狭くて快適とは言い難いもののなんとか我慢できる範囲でした。ブダペストのバスターミナルからは地下鉄で5駅10分程度でホテルの近くに着きました。一人300フォリント(130円程度)一番古い路線のため車両も古いものでしたが安くて便利です。
今回の宿泊は1泊ということもありクリスマスマーケットに近く料金が安い所という条件で検索(Booking.com)した結果アパートメント(民泊)を予約してみました。住所は直ぐわかりましたがどこにもアパートメントの名称がなく受付もありません。ようやくアパートのインターホンの部屋表示の一つに小さく手書きでアパートの名称をみつけボタンを押しましたが返事がありません。電話すると事前に連絡してあった到着時間より早かった(バスが1時間半早く到着したため)のでまで着ていないとのことでした。幸いアパートのビルの1階に荷物一時預かり所があったのでスーツケースを預け、クリスマスマーケットの見物に行って時間をつぶし予定の時間にやっとチェックインができました。「古いアパートの一室を綺麗に改修し貸出し、事前に連絡した時間にスタッフが出向いてチェックインを行い、全額現金で前払い、チェックアウトは鍵をメールボックルにドロップする。なにかあったら電話で連絡し対応する」というシステムでした。部屋自体は広くて綺麗、料金も室料80ユーロ+掃除代15ユーロ=95ユーロ(約12000円)場所はブダペスト随一の繁華街の一画でクリスマスマーケットから5分と最高に便利なところなので良い選択だったとは思いますが民泊にはそれなりに問題(不便)があることが認識でき良い勉強となりました。
ところでブダペストのクリスマスマーケットは最高でした。ヴルシュマルティ広場周辺と聖イシュヴァーン大聖堂前広場の二会場がありドイツのものに比べてスケールでも負けていないばかりか、屋台の商品バリエーションが多くてセンスが良く(ドイツは屋台は多いが同じようなクリスマス商品ばかり)テイクアウトのフード屋台の料理のバリエーションが豊富でテーブルや椅子があって座って食べられる(ドイツは料理のバエーションやテーブルが少なく椅子はほとんどない)というグルメとショッピングという面ではドイツクリスマスマーケットより勝っていると思います。

ホッロークー Holloko

ブダペストから北東に約100km、バローツ洋式の伝統家屋の残る世界遺産の村。残念ながら冬期のためほとんどの施設が開いておらず外観を見ながら散策しただけでした。観光客や住む人の姿もほとんど見えませんでしたが、その分静かで美しい村を満喫することができました。

マチョ博物館 Matyo Museum

ホッロークーから約100kmブダペストから約130kmのメセーケヴェジュドにあるマチョ刺繍の博物館。博物館の正面にマチョ刺繍を今日のスタイル(多種多様な花柄と豊富な色)に発展普及させたKisjanko Bori女史の胸像が置かれており、2階の展示室には女史がデザインした花々の元絵が展示されていました。

マチョ刺繍講習 Matyo Embroidery Workshop

ハダス地区の民芸館(House of Folk Arts)で1時間ほどマチョ刺繍の個人レッスンを受けました。

ハダス地区 Hadas District

マチョ博物館の近くに、マチョ刺繍を発展普及させたKisjanko Bori女史の家を中心に民芸関連の家が集まっている地区があります。あいにく塗装家具の家などは閉まっていましたがKisjanko Bori女史の家、織物の家、刺繍の家、民芸品店などを見ることができました。博物館とは違って生活の中の刺繍を見ることができ良い勉強になりました。

料理

ルーマニアの料理に関する知識はほとんどなくガイドブックによるとボリュームのある肉料理が中心のようです。家内は旅行中は体調管理のためヘビーな料理を避けていることもありスープとサラダをメインに食べていました。一番興味深かったのは一斤ほどの丸型パンの中身をくり抜いて豆のスープを入れたものでした。サイコロ状に切ったロースハムのような肉も入っていましたが味はそれほど濃くなく美味しくいただきました。サラダは野菜が新鮮でドレッシングもシンプルで結構でした。牛肉のひき肉を俵型にして焼いたハンガリー風ハンバーグステーキといったものもいただきましたがこれも予想外におとなしい味で美味しいものでした。ルーマニアは歴史的に多民族国家でドイツ系やラテン系の食事も一般的で、どの町にも美味しいイタリアレストランがありました。クルージュ・ナポカで食べたオッソブーコは絶品で付け合せのミラノ風リゾットが黄金色で今まで食べた中で一番でした。それからルーマニアワインが素晴らしく白(シャルドネ)と赤(カベルネ)はレストランおすすめのハウスワインで十二分に美味しく陶然となりました。
ハンガリーの料理も伝統的なものはルーマニアと同じようにボリュームのある肉料理が中心のようです。前回ブダペストで食べた生フォアグラのソテーが超絶美味しかったので今回もと思ったのでが、クリマスシーズのためお目当てのレストラン(コムセソワ)がクローズであったため今回はミシュランの星付きの創作ルーマニア料理の店に行きました。非常に洗練されフランス料理のようでプレゼンテーションも美しく大変美味しいものでした。最後の夕食は温泉リゾートホテルで1泊2食のバイキングでした。これが一般的なハンガリー料理なのでしょうが正直あまり美味しくありませんでした。やはりレストランとメニューを選ばないと美味しいものは食べられないということですね。